歌手デビューして売れたら印税生活できるの?という質問に真面目に答えます

印税でどれだけ儲かるのか

最近、作曲者・平尾昌晃さんの遺産を巡る争いが連日報じられています。その額60億円とも言われており、主な内訳が作曲印税であることは想像に難くありません。歌謡曲が全盛だった時代を代表する作曲家でもあり、音楽業界全体を見渡しても圧倒的な成功者だったと言えるでしょう。
そんな中で、歌手志望の方や仕事でお付き合いのある方などと話している最中にやはり平尾昌晃さんの話題になることがあり、「印税ってそんなに儲かるんですか?」と聞かれたりもします。そんなときは「平尾昌晃さんは別格すぎるので参考になりません。実際には難しいと思いますよ」といった感じで答えてますが、歌手を目指している方が実際に気になるところでもあると思いますので、今回は音楽に関する印税について、また歌手デビューしたら印税生活できるのかという点について回答してみたいと思います。

まず残念なお知らせですが、今の時代に音楽で成功して印税生活を狙うのは、宝くじで一等前後賞を当てるくらいの確率で難しいです。その理由を説明する前に、そもそも印税の仕組み自体がよく分からないという方のために、ざっくりと説明させて頂きます。
音楽ビジネスは「権利ビジネス」と言われるほど、権利関係で収益を上げることがとても重要です。またその権利は様々な種類がある上に複雑に入り組んでおり、例えばレコード会社や音楽事務所と歌手との間でこの権利を巡って争いになることも日常茶飯事だったりします。そしてこれは何もこの日本に限った話ではなく、音楽産業の本場であるアメリカを中心に、世界最大手のレコード会社と世界的アーティストの間で裁判したりと、この権利に関するトラブルは音楽業界にとって付き物と言えなくもありません。

仮にこれからデビューしたいと思っている歌手志望の方がこれを読んでくださっていると想定した場合に、是非覚えておいて頂きたいものとして「歌唱印税」というものがあります。別名「アーティスト印税」とも呼ばれますが、通常は売上の1%が相場になりますので、例えば1枚1,000円のCDが売れた場合に、歌手には10円が印税として支払われるということです。
また他にもご自身で作詞または作曲をした場合は著作権が発生します。これはケースバイケースですが、JASRACに著作権を委託している作家(つまり歌手本人が作詞または作曲をしているケース)であれば、レコード会社からJASRAC、また音楽出版社を通じて、契約内容にもよりますが最終的にはだいたい3%ほどが歌手に印税として支払われます。もしCDが1枚1,000円であれば30円ということですね。
1つの例として、1枚3,000円のCDアルバムを発売し、全曲ご自身が作詞をして、かつJASRACと著作権信託契約を締結していた場合に、このCDが10,000枚売れたとすれば、かなり大まかですが

CDの価格3,000円×10,000枚×0.04(歌唱印税1%+作詞印税3%)=1,200,000円

が印税として入ってくる計算になります。また、コンサートを行えばチケット販売による収入の数%や、カラオケで1回歌われるたびに数円が印税として入ります。単純に印税のことだけを考えると、ご自身で作詞をした方がメリットは大きいです。1曲でもヒット曲を持っている歌手は、ディナーショーで全国を回ったり、カラオケで不特定多数の人に歌ってもらうことで、出演料だけでなく印税が数十年に渡って入り続けることになります。

このように歌手としてある程度の成功を収めることができ、かつ作詞など著作権にも関係している場合であれば、音楽業界での成功は金銭的な面でもかなり夢があるのも事実ですが、冒頭でも述べた通り、印税で不労所得を得て悠々自適な生活を送れるかと言えば、結論としては実現可能性はかなり低いと言わざるを得ません。その理由は以下の通りです。

今の時代、ヒット曲がそもそも少なすぎる

少なくともモーニング娘。が全盛期だった頃(00年代前半)までは、それでもまだオリコンチャート上位の曲を多くの人がどこかしらで聞いていたり、ちょっと口ずさむこともできましたが、ここ数年チャート上位に来る曲のほとんどを多くの人が知らないのではないでしょうか? AKB関係の新曲がミリオンを達成したという話はこの時代でもチラホラ聞こえてきますが、それですら知らない曲の方が多いのが現状だと思います。以前は世代ごとに共通して知られている曲がありましたが、音楽を聞く環境やメディア(宣伝媒体)がこの10年ほどで多様化し、より手軽に誰もが好きな音楽をいつでも楽しめるこの時代に、「ヒット曲」という存在自体がなくなりつつある中、仮に歌手デビューできたとしてもヒット曲を持てる可能性は限りなく低いでしょう。

CDからダウンロードへ、さらにストリーミング配信への移行で曲単価が下がった

歌唱印税にしても作詞や作曲の著作権印税にしても、その多くが売上に対するパーセンテージで決定されますので、コンテンツの単価が下がれば印税が下がるのは必然です。ただこのコンテンツの移行という点については補足が必要で、コンテンツ自体の販売による単価が下がっても、多くの人に聞いてもらいファンが増えることで、コンサートやカラオケで歌われることが増えれば、むしろ入ってくる印税は増える可能性もあります。実際に音楽業界ビジネスの大きな流れとして、CDなどのコンテンツ販売からコンサートなどの興行収入をより重要視するという点があり、CDは売れなくても(儲からなくても)チャンスはいくらでもあるので、あまり気にする必要はありません。

これからカラオケ人口がもっと減っていく

DAMやJOYSOUNDなどの通信カラオケが主に利用されるのはカラオケボックスやスナックなどの飲食店になりますが、世代別で見ると年齢層が高いほど利用されている傾向があり、また少子化のため若い世代が少なく、通信カラオケで歌われる曲の多くは最新のヒット曲ではなく、今でも往年の演歌や昭和の歌謡曲です。カラオケ好きの特徴として、いつまでもずっと当時好きだった曲を何度も繰り返し歌うということが挙げられますので、これから新たに世に送り出される曲を多くの人にカラオケで歌ってもらえるような状況になることは、なかなか想像がつきません。

歌手が成功するために、お金よりも重要なのは

それでは「これから歌手を目指す人はどうすればいいのか?」という話になりますが、答えは簡単です。印税などの不労所得をあてにせず、単純に音楽を楽しめばいいんです。コンテンツやビジネスのあり方が変わっても、本質的なことは何も変わってないのですから。
さらに言えば(これは音楽に限った話ではないですが)、金銭的な成功よりも純粋に人を楽しませたい、喜ばせたいという思いで取り組む人の方が相対的に成功する可能性は高くなりますし、実際に私の知っている範囲で歌手にしろ起業家にしろ成功している人の多くは、自分のことより人のことを考えられるタイプの方が本当に多いです。つまり、お金を求めず人のためになることを一生懸命がんばっている人が、結果的にお金を得ることができていて、逆に成功して自分がお金持ちになることを目標にしている人には、結果的にお金が回ってこないのです。なので、知識としてもちろん印税や権利のことは知っておいた方がいいのは間違いありませんが、「印税クレクレ」「権利クレクレ」という方は歌手でもそうでなくても、長期的な視点で考えると上手くいかなくなっていく可能性のほうがよっぽど高いですから、「印税なんて気にしてないよ」くらいのスタンスで、純粋に音楽を楽しめばいいんです。

もちろん印税は所有者が主張できる当然の権利ですので、これをないがしろにするということではなく、主張できるものはしっかりと主張するべきであるとは思っていますが、そういった権利ばかりにとらわれすぎてしまい結果的に多くのものを失ってしまう歌手やクリエイターの方をこれまでに多く見てきているため、これからプロの歌手を目指すという方には「お金より音楽で人や社会に貢献したい」というスタンスでいてほしいと助言したいというのが本音のところです。

オープンマインドが成功の秘訣

私が尊敬している歌手の1人にOmarion(オマリオン)というアメリカのアーティストがいます。彼は子供の頃に4人組グループ・B2Kのメンバーとして全米デビューし、その後ソロとして活躍の幅を広げながら映画「You Got Served」で主演も務めるなど素晴らしい経歴を持っている方です。
以前私が雑誌の編集者だった頃に、度々来日していた彼に何度かインタビューをさせて頂いたことがあったのですが、「成功の秘訣は?」と質問したところ「Because I’m open minded.」(心を開いているからだよ)と答えてもらったことが印象深く、10年以上経った今でも強烈に覚えています。この「open minded」(オープンマインド)というのはアメリカ人などによく使われる言い回しでもあるのですが、意訳としては「気さく」という感じです。
会う度に文字通りとても気さくな態度で接してくれたのですが、スーパースターのオーラを放ちながら、私を含む誰に対してもさり気なく気遣ってくれたり、何かする度にニコニコしながら大げさにリアクションを取ってくれたりと、会う人全てを魅了してしまうような人柄の根源には、彼がオープンマインドであることを常に心がけているからということをインタビューで知り得たときに、なるほどなと、妙に腑に落ちたわけです。ちなみにこのインタビューの少し後、まさに映画「You Got Served」で彼は大きな役を勝ち取ったのでした。とても素晴らしい映画で、オマリオンのエンターテイナーとしての才能が遺憾なく発揮されている作品なので、もしご興味があれば是非ご覧頂きたいと思います。

逆のパターンで「才能があるのにもったいないな」と思う残念なケースとして、「私は誰にも心を開きません」と言わんばかりの態度の歌手も多くいて、すごく損してるなと感じてしまいます。ただ彼らの気持ちはすごく分かります。というのは、多くの(芸能界もそうですが)音楽業界関係者は真面目に、真剣に音楽の仕事をしていますが、ごく一部の悪どい関係者が存在しているのも事実で、こういった人達が右も左も分からない新人やデビュー志望の歌手を食い物にする事案が昔から多く発生していて、スタート地点でいきなりそういう人に当たってしまった結果として「音楽業界の大人=全部悪い人達」と思い込んでしまい、「騙されてたまるか」と意気込んだ結果として自分の周りに分厚いバリアを張り巡らせてしまうんです。
そういう人達に是非知ってほしいです。ほとんどの業界人は真面目で仕事熱心で、純粋に音楽が好きでその仕事に携わっているんですよ、と。むしろ業界歴の短い歌手にとって彼らは最高の相談者であり、最も頼るべき存在なので、心を開けばあなたにとってこれ以上ないほど力強い存在になってくれるはずです。その反対に心を閉ざしてしまうと、業務として最低限のことはしてくれるでしょうが、それ以上のプラスアルファになる部分では何の力も発揮してくれないかもしれません。業界歴10年のディレクターも、業界入りたての新人歌手も、同じ人間ですからね。

話が若干脱線してしまいましたが、これから歌手としてデビューし、羽ばたいていく皆さんの中から、1人でも多くの方に成功してほしいという思いを強く持って、私どもは日々この業務に取り組んでおります。私どもの方では「JASRACと契約するにはどうしたらいいの?」といったものから「どうやったら売れますか?」「作詩家協会に入れますか?」など幅広い相談に対して親身になって助言させて頂いてますので、気になることがあれば是非いつでもお気軽にご相談頂ければと思います。私もオマリオンの思考に感化され、それ以来というもの常にオープンマインドでいることを心がけていますので、どんなご相談も大歓迎です!

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